大型市民記者メディアは無理と決した [ブログ時評65]

 開設1週間で「オーマイニュースの可能性ほぼ消滅か」と見放したが、ほぼ1ヶ月を経て、オーマイニュース日本版はアクセスが激減し、商業ベースから完全に脱落してしまった。「alexa.com」で「アキバBlog(秋葉原ブログ)」とアクセス人員を比較したグラフを見れば、1日平均10万人を大きく割り込むと知れる。「ReadMe! JAPAN」の週間ランキングによればアキバBlogが1日平均10万人である。ページビューに直すと多少増えても、個人ニュースサイト程度では話にならない。

 折しも、オーマイニュース非常勤編集委員・佐々木俊尚氏が22日付「記事の質、最終的には『説得力』」で「オーマイニュースの市民記者の記事には、その論理的組み立てが欠如しているケースが多いように思う。たとえばありがちなパターンとして、何でもかんでも小泉批判に結びつけて、『小泉改革がこういう社会を生み出したのだ』と書く人が案外に多い」と本文に書き、コメント欄(20)で「現状、オーマイニュースが2ちゃんねるにもブログにも劣っているのは、その通りだとおもいます」と告白している。コメント欄をほぼ占拠し、批判し続けている2ちゃんねらー達に理があると認めたようなもの。その2ちゃんねらーも去りつつある。

 韓国でオーマイニュースを興したオ・ヨンホ代表は2003年の「オーマイニュース オ代表が同志社大学で講演 韓国オルタナティブ・メディアの現在」で成功の原因をいくつか挙げ「最後に最も重要な原因は、市民の準備が十分に整っていたことです。『ネチズン』と呼ばれる人たちがいたこと、社会問題に自ら参加しようとする人がいたことが成功の大きな原因だと思います」「もし日本でオーマイニュースのようなメディアを創りたいのなら、この様な『準備された市民』がまず必要です」と結んだ。

 これを読んだ当時はどんな「準備された市民」かと思いめぐらせたものだ。今回、オ・ヨンホ代表が「日本版の方が記事のレベルは高い」と発言しているのを見て、ノ・ムヒョン大統領が登場した政治情勢におんぶされた「準備」に過ぎなかったと判断できる。alexa.comで調べれば分かることで、本家オーマイニュースのアクセスは全盛期の30分の1以下に落ち、現状はアキバBlogに毛が生えた程度でしかない。

 私が勤める新聞社にも毎日、大量の投書が届き、一部は読者欄に掲載している。はっきり言って掲載に耐える内容は、全体の数十分の1でしかない。オーマイニュース日本版のように来た原稿は全て掲載する原則なら、冗漫すぎて誰も見向きもすまい。オーマイニュースの場合、編集長以下9人も揃えた編集部の「頭」の準備がほとんどされていなかったのだから、オ・ヨンホさんには「『準備された編集部』がまず必要です」――とお返ししておこう。

 インターネット新聞JANJAN、ライブドアPJニュース、ツカサネット新聞に続いて、オーマイニュース日本版も社会的な影響力は持てないと決した。こうした大型市民記者メディアは日本には根付かないようだ。だからと言ってネット上の知のレベルが低いのではない。

 メディア報道の欠陥を捉えた的確な批判は日々に巻き起こっているし、ネットから検索により簡単に見つけだせる。私がそれを引っ張り出して新聞社内に配れば、理解する人が増えている。メディア各社は最近、ブログなどで読者、視聴者の声を聞く態勢を整えつつある。現状は読者サービス的な色彩が強いが、メディア水準を超えた市民の「知のピーク」を取り入れるべく、市民社会と対話する方向に自覚して進む時が来たと感じる。マスメディアが自分でしなければならないと、オーマイニュースの挫折は教えている。

【関連】
オーマイニュースの可能性ほぼ消滅か [ブログ時評63]
市民記者サイトは高い敷居を持つべし [ブログ時評30]
ライブドアPJに忠告し忘れた欠陥 [ブログ時評10]
※インターネットで読み解く!第150回「ネットと既成とジャーナリズム横断」