時評「検索をフォースに10年書き続けて」

 一連のネット上連載を書き始めて10年が経った。

 1997年5月8日、インプレス社「INTERNET WATCH」上で「インターネットで読み解く!」の第1回「空前の生涯独身時代」を公開したのが始まり。1人で企画を考えた頃には「千里眼」という試験的な検索エンジンしか存在せず、連載開始とほぼ同時に商業用の「goo」「infoseek」が生まれた。ついで「Google」が圧倒的な性能で検索の世界を制覇した。ブログの隆盛とともにブログ検索が登場、数分前の書き込みをキャッチ出来るようにもなった。先日の第154回「世論の形成をブログの頻度から観察」で伝えたように、今では議論の流れを過去に遡って捉え、ピンポイントで読み返すことが可能になっている。

 インターネットで検索することの意味を、開始から半年の第25回「インターネット検索とこのコラム」で既に明らかにしている。その際「インターネットでの検索とは、映画『スターウォーズ』の騎士ジェダイが手繰るフォース(理力)のようなものだ。気付かない人には何の価値も効力もないが、使い手にとっては昨日の不可能を、可能に変えてくれる」と書いた。その通りに10年間が過ぎたことになる。この間、日本のネット上での重要な発展、個人ニュースサイトの隆盛にも立ち会い、第128回「ニュースサイトが生む津波アクセス」で「津波アクセス」という表現も生み出した。

 10年も同じことをしていたら続かなかったろう。1998年夏にはメールマガジンの世界に加わるために独立し、明治維新や自動車産業、学力低下問題など、扱う話題の幅を広げた。メルマガの読者数は最高2万3千人を数えた。その一方、第1回「空前の生涯独身時代」で開発した、ネット上の統計資料を独自分析する手法を発展させ、第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」へと繋げている。

 出会いが新しい段階をいくつも開いてくれた。英語のフリーペーパーを作りたい人が最初に英訳してくれ、ついでPHPの英文雑誌にコンテンツを提供するようになって英語版サイト「Japan Research and Analysis」が生まれた。2004年に「神奈川大学評論第48号」に頼まれた評論「ネット接続に群がる日本の光景」と、岩波書店『世界』60周年プレ企画の座談会用の第150回「ネットと既成とジャーナリズム横断」が、ブログの世界と本格的に向き合う「ブログ時評」をつくる機会を与えてくれた。先の第154回「世論の形成をブログの頻度から観察」は5月開催の日本選挙学会での報告の一部としてまとめたものだ。4月から大阪の月曜夕刊で「ウェブ通」と題したコラムを書き始めた。これまで歩いてきて見かけた、気になるサイトを硬軟とりまぜて書いていく。

 様々に膨らんでいった10年間だった。次の10年も最初の10年以上に予想を超えた展開になると期待している。