日本経済への先行き悲観論が目白押し [BM時評]

 この半月、日本経済の先行きへの悲観論が急速に高まっている印象があります。日経ビズプラスの「GDP成長率は2年連続でマイナス2%超の可能性も(新家義貴氏)」もかなりショッキングでした。図表「実質GDPの推移」にある「08年10−12月期のGDPは前期比年率で2けた減か」の予測は厳しすぎるようにも思っていたのですが、ここに来て日銀のマイナス成長予測もこれを是認している感じです。

 そんな折に英エコノミスト誌「日本経済:早期回復なるか」の「金融危機の嵐に直撃されなかった日本経済が、今ほかのどの先進国よりも急速に縮小している」との指摘を見て、納得するものがありました。このグラフを見てください。鉱工業生産の縮小ぶりは尋常ではありません。  「BNPパリバ証券のエコノミストの白石洋氏は、鉱工業生産は昨年12月時点で既にバブル後最低だった2001年の水準まで落ち込んでおり、堅実な回復とされていた過去6年間の成長分が吹き飛んだと見ている」「不況が終わるまでに、生産高は1987年の水準にまで落ち込むと白石氏は予測する」。自動車とハイテク電子機器中心で引っ張ってきた脆い産業構造が、欧米の需要落ち込みを大きく増幅した形になっています。

 そして、第一生命経済研究所のレポート《1人当たりGDPの「失われた10年」 〜日本はこのまま内需が弱いままなのか》です。G7諸国中で最下位になってしまった日本の1人当たり名目GDP。これもグラフを引用します。  どうしてこのような停滞が続いてしまったのか、どうして労働生産性が上がらなかったのか、との問題について、労働市場で非正規化が進んだことにも原因を見ています。「経済成長において、人口減少の制約を突破するには、1人当たりスキルの発揮が活路となる。労働力が限られていても、企業内教育投資を付与して可能な限りまで人的資本を増やすことが、生産性向上に貢献する」「しかし、非正規労働化は、この考え方とは正反対の働きである。パート・アルバイト・派遣労働者には、企業が身銭を切って人的資本を投下することはせず、人的資本が蓄積されにくい」

 これから先の「1人当たりGDPの先行き」も、内閣府・IMFによる見通しとして示されています。停滞はさらに続き、先進国の中で置いて行かれるばかりでなく、アジア諸国の成長にやがて追いつかれてしまうグラフが描かれています。「日本社会が非正規化を進めすぎたことは、広い視野でみてみると、税・社会保険料負担を担うべき正社員のパイを相対的に小さくしたという皮肉な結果を招いた。正社員への荷重が重くなり、賄いきれなくなった負担が、間接税増税として高齢者自身に及んでいるという図式である」との結論とともに一読されることをお奨めします。