雑誌不況、マンガ不況、出版不況… [BM時評]

 読売新聞が出版科学研究所の推定として「昨年の雑誌販売、11年連続の減少…落ち込み幅は過去最大」と伝えています。雑誌の4.5%減少は確かに大きいですね。昨年はかつては有力だった雑誌の廃刊が相次ぎ、業界全体が地滑り的な縮小に向かっている感じです。同研究所の「日本の出版統計」にあるグラフを見ると1997年から落ち始めていて、インターネットの普及との関係が言われるのですが、よく見ると週刊誌やコミック誌はそれ以前から下降し始めています。

 ブログから拾うと「海難記」の「2兆円割れ寸前〜2008年の出版市場」が「2009年には出版市場が2兆円割れするのは確実だろう」とする一方で、世間に言われているような「日本人の読書離れ」はないと主張しています。「年間9000億円もの書籍販売額が維持できるはずがない。この額はおおよそ1975年の2倍、1964年の10倍、そして1959年の30倍である。本はますます読まれるようになり、そのなかで純文学や思想書といった堅い本の比率が相対的に減っただけだろう。かつては選択肢が少なかったから、しかたなく、こうした堅い本を読んでいた読者だっていたはずである」

 ネット上の電子書籍としてリリースされた中野晴行著の「まんが王国の興亡」〜なぜ大手まんが誌は休刊し続けるのか〜が評判になっているようです。無料でかなり長い立ち読みも出来ます。また、ITmediaの《「旧世代の漫画屋、最後の冒険」――雑誌不況下で創刊した「good!アフタヌーン」》も興味深かった記事です。「漫画家の原稿料は通常、漫画雑誌の売り上げから支払う。単行本は原稿料なしで、印税のみを作家に支払うのが一般的。雑誌をなくしてWebで無料公開すると、漫画家に支払う原稿料の出元がなくなってしまう」。そうだったらコミック誌が止めていく現状は大変なことです。水源地が干上がっていくようなものですから。

 論創社の「出版状況クロニクル 8」(2008年11月26日〜12月25日)は雑誌が出版業界全体の牽引役だったと指摘、自動車販売の激減が日本経済を揺さぶっているように、雑誌の急減は出版業界の垂直落下状態を招くとしています。データが豊富です。印象的な記述は97年以前の週刊誌黄金時代についての部分でした。

 「この時代に週刊誌が商店街の書店の集客の柱だったとこと示していよう。それにつけても思い出されるのは、まだ町の商店街が元気であった時代には書店だけでなく、多くの喫茶店、食堂、飲み屋、床屋、美容院などがあり、それらは町の社交場を兼ね、またかならず週刊誌が置いてあった。つまり自ら買うことに加え、週刊誌を読むインフラが町の中に整えられていたのである。しかし21世紀に入り、それらを含む商店街は壊滅状態になってしまった」

 この構造変化に加えての今回の大不況です。既に大企業を中心に広告費カットの動きが急です。2009年、書籍は微減でも、雑誌はさらに大きな波をかぶってしまうのかも知れません。