第177回「インターネット世界に地殻変動を感じる」

 インターネットの世界は一本調子に拡大してきたように思われがちですが、TechCrunchの「ウェブの成長は停滞しているのか、それとも小休止なのだろうか」のグラフを見ると、経済活動の一環であり、景気変動の波をしっかり反映していることが分かります。もうひとつ気になるグラフを「何故伸びるTwitter!!??」(FPN)で見ました。ふたつのグラフを並べて見ましょう。  ウェブサイト数の成長は「2001年から2002年にかけては成長率がマイナスとなっており、2008年にも増加数が減っている。これはつまりウェブサイトの増減は、全体的な経済動向により左右されるということを示す」「2009年には4600万ものサイトが新たに登場したが、そのほとんどは中国のブログサイト」という状況だそうです。中国では自動車販売台数が既に上向いていて、経済的にはある程度の活況にあるようです。

 この記事には2008年から2009年にかけて、各国のインターネット人口がどう動いたかの一覧が付いています。非常に目立つのは中国の19%増加に対して、米国がわずか1%増なのです。

 では、米国は完全に停滞しているかと言えば、そうではありません。「今年になってTwitterの伸びが目立ちます。現在は1週間に約100万人づつ参加者が増えているようです」「現在米国のユニーク参加者数が約9百万人、その他のグローバル参加者が実数で1千9百万人に上っています」と、ウェブの停滞を横目に、一度に140字しか書けないミニミニつぶやきブログ「Twitter」に流れ込んでいるのです。これはウェブサイトの増加にはカウントされないでしょう。

 オバマ大統領が選挙戦でTwitterを使ったことは有名です。新型インフルエンザ流行で、米疾病対策センター(CDC)は「CDCemergencyはTwitterをつかっています!」とアピールしています。死者数や感染の広がりなどの情報を124000人が「フォロー」しています。

 Twitter創業者Biz Stoneのスピーチの記録が「Twitterは人間性の勝利であって、テクノロジーの勝利ではない」に。シンプルなサービスであっても、使われ方が問題です。

 《UCバークレーの学生がエジプトでのデモ抗議をカメラで撮影する活動をしていて、エジプトの警察に逮捕された。「タイホされた!」という彼のつぶやきに反応し、フォロワーが、学部長を呼び、学部長が弁護士を呼んだり、とサポート活動が自然に起こったおかげで、「逮捕された!」のつぶやきの2時間後には「自由の身だ」のつぶやきが!》

 FPNの記事は「インターネットの第二の波が『即時性=同期型コミュニュケーション』、『3D化』を求める方向に向かっている。それが歴史的な新旧メディアの転換点と重なっているのが大きいと思われます」「テレビや新聞に代わるリアルタイム社交とリアルタイム報道の新しい形を、米国を中心とする若者の新しいライフスタイルは求めています」と指摘しています。

 今年1月の「ハドソンの奇跡」で「航空事故の現場写真,Twitterで第一報が」世界に発信されました。ハドソン川の不時着現場近くにいて救助に向かったフェリーに乗り合わせた乗客が撮影した、主翼に乗客が立ち並ぶ写真です。潰れてしまったオーマイニュースには「地の利」「時の利」を感じることがほとんどありませんでしたが、1900万人の参加者が発信するものにニュースが含まれて当然です。「Twitter検索」でうまくすればキャッチできるようですから、マスメディア側も注目せざるを得ないでしょう。国内では米国ほどには活発になっていないようですが、「Twitterはじめて一年たったけど、(たぶん)人生変わった」と経験を語る人も出ています。