|
団藤保晴の |
|
新型インフル検査、厚労省の非科学と杜撰 [BM時評]
(2009/05/24)
(「Blog vs. Media 時評」に同文掲載。コメントなどはそちらに)
読売新聞の《新型インフル患者数、「新規発症は減少」と厚労省》をはじめマスメディアは、厚労省が「ピークは20日で、ここ数日は新規の発症者が減ってきた」とみていると伝えました。厚労省はまだ、新型インフルエンザの流行状況を自らの管理下に置いていると信じているようです。驚くべき非科学性です。政府が取ってきた流行阻止対策の前提は悉く崩れ去っています。新規発症者が減っているのは、するべき患者に遺伝子検査をしないからにすぎません。
●神戸市発熱相談センターに寄せられた電話相談件数 5月11日(月) 144件 累計1172 5月12日(火) 103件 5月13日(水) 61件 累計1336 5月14日(木) (不明)件 5月15日(金) (不明)件 (神戸市で新型インフルエンザ患者発生) 5月16日(土) (不明)件 5月17日(日) 1,875件 累計3557 5月18日(月) 2,089件 5月19日(火) 3,640件 5月20日(水) 2,836件 5月21日(木) 2,820件 5月22日(金) 2,179件 ●東京都発熱相談センターに寄せられた電話相談件数 5月11日(月) 593件 累計8697 5月12日(火) 1,143件 5月13日(水) 816件 5月14日(木) 601件 5月15日(金) 480件 (神戸市で新型インフルエンザ患者発生) 5月16日(土) 450件 5月17日(日) 889件 5月18日(月) 1,425件 5月19日(火) 4,563件 5月20日(水) 4,895件 (東京で初の感染者。米国帰り高校生) 5月21日(木) 4,749件 5月22日(金) 6,124件 (東京3人目。大阪観光から帰った直後) 5月23日(土) 5,654件 神戸がやや落ち着いてきているのに対して、東京は23日の土曜日も殺到している感じです。では、この多数の相談者に適切な検査がされているのでしょうか。18日に至って、汚染国や汚染地域に行っていない場合にも検査対象を拡大をするとした「都内での感染者発生早期探知に向けての東京都の対応方針」は病院については「38度以上の発熱及び呼吸器症状のある入院患者又は医療従事者が3名以上発生し、迅速診断キッド判定がA(+)であった場合」、学校では「学級又はクラブ単位で38度以上の発熱及び呼吸器症状のある生徒、児童が3名以上発生し、迅速診断キッド判定がA(+)であった場合」に遺伝子検査をするというものです。これでは神戸や大阪で最初に見つかった、医師が現場の勘を働かせたケースは遺伝子検査に回りません。1人の医師の所に3人もの同級生が相次いで来る想定に無理があります。集団発生しても別々に医師にかかれば網にかかりません。そして、簡易検査(迅速診断キッド判定)は無意味どころか、このケースでは感染者の半数を見落とす結果につながります。 公式に報告されているデータを集めただけでも、厚生労働省の新型インフルエンザ検査体制は破綻しています。患者発生状況を原理的に把握できないのです。これで「ここ数日は新規の発症者が減ってきた」とのコメントは失笑を買うだけです。奈良県は週初めに1100人もの異常を把握しながら「指示」に従って遺伝子検査に回したのは7人で、いずれも「陰性」だから問題なしと発表したようです。 起きている現象を的確に観測できなくなっている恐れがあれば、観測システムを切り替えるのがサイエンスの常道です。全数検査までする力がなければ、発熱相談者に適切なサンプリングをして遺伝子検査を実施すべきです。そもそも人類未経験の新型インフルエンザ流行が、最初に描いたシナリオ通りに進むと考える方が傲慢不遜ですし、ここまで来て簡易検査を外そうともしない杜撰さには驚き入ります。 【リンクはご自由ですが、記事内容の無断での転載はご遠慮下さい】 ※ご意見、ご感想や要望はメールフォームで。 |