新型インフル5千人。お寒い都の監視体制 [BM時評]

 新型インフルエンザ感染者数が7月24日、5千人を突破して午後6時現在で5023人になりました。19日午前6時の集計で4千人を超えたばかりですから急速な感染の拡大が進んでいます。再流行がはっきりしてきた大阪府では1023人を数えるありさまです。ところが、この節目の発表を契機に大阪府は「24日以降は、国の新たな方針に沿って全数把握を行わなくなりました。大阪府内の新型インフルエンザの新規感染確定者数の公表は本日で終了します」と告知しました。今後に向けて、これでいいのか、後述する東京都など、かなりお寒い監視体制です。感染症情報センターにある「日本の流行地図(7月24日午前6時現在)」を掲示しておきます。5千人直前、4986人段階です。  「WHO発表の確定例(累計) (日本時間 2009年7月6日 午後6時現在)」は94512例に達していますが、数千人規模になって相当の死者まで出ているイギリス、オーストラリア、アルゼンチンなどは少し前から患者数の把握を取りやめています。蔓延期に入ったので対処方法を変えるとの判断なら理解できます。ところが、国内は蔓延期突入とのアナウンスもなく、格段の感染注意を呼びかけるでもなく「集団発生を監視する体制に移行します」とだけ説明されています。

 今後は全国にあるインフルエンザ定点医療機関を中心に、集団発生が疑われるときに遺伝子検査をして新型か確定することになりますが、都道府県ごとの「やる気の違い」あるいは「及び腰度」で、適切な流行把握が出来るかどうか、疑わしいのです。例えば東京の「ウイルスサーベイランス(更新日 2009年7月22日)」を見ると、新型インフルエンザ感染者を5、6月は発見できず、7月に入って、やっと1人見つけただけです。それどころか、6月以降は新型以外もほとんど出ていない状況です。  全国の有志医師が自主的に診断データを集積している「MLインフルエンザ流行前線情報DB」から、東京でのインフルエンザ発生グラフを引用します。東京の有志医師は53人で人口を考えると決して多くはありません。それでも7月に入って都議選前後に、全国動向と違う発生ピークが出来ています。遺伝子検査まではしていませんが、いずれもA型ですから新型の可能性は高いと思います。はるかに数が多い「定点」は何をしていたのでしょうか。  大阪府で感染者千人を突破したのも、保健所や医療機関に調べる意欲があればこそだと思います。都が把握した感染者は200人余りで、しかも4割は渡航歴がある国外感染です。学校などの集団発生も、神奈川や千葉などから通学する生徒が自宅のある自治体で感染が確定、都内にある学校を調べて集団発生が分かった例がほとんどなのです。東京都の役人は有能なのか無能なのか、平時なら色々な見方が出来ますが、本当に恐ろしい感染爆発、パンデミックへの予行演習と言われた今回の新型騒ぎについては、落第点は間違いなしでしょう。

 【参照】第179回「新型インフル、国内の持続的感染が確定」
     第181回「都議選が新型インフル爆発の引き金に?!」