アフリカ寒村の少年が短期独力で風力発電 [BM時評]

 ネット上でいい話として評判になっているCNNの「マラウイの少年、独学で風力発電に成功 7年かけ」を調べてみました。見出しの取り方がやや不適切で、14歳の少年が思い立って3カ月で風力発電を実用にしてしまったというのが話の核です。それから7年、サクセスストーリーに続きがあって、9月末に自叙伝が英語で出版、ヒットしてCNNの記事に繋がったようです。

 人口1500万人、東アフリカの国マラウイ。首都から車で2時間半、北東に行った寒村でウィリアム・カムクワンバ君は1987年に生まれています。「William Kamkwamba」によると、農家7人兄弟の2番目。小学校は卒業できたのだけれど、2001年の大干ばつで年間80ドルの中学校授業料が払えなくなり中退します。小学校にあった図書館に通い「エネルギー」の教科書を見つけ、表紙にあった風力発電に魅せられて、自宅照明用に造る決心をしました。夜の灯りには灯油を使っていて、光はゆらゆらするし、臭いもあり、高価だったのです。

 2007年に書かれたブログ「A new wind blowing in Africa」に高さ12メートルの風車台にカムクワンバ君が立つ写真があります。発電機が無かったので廃品自転車の灯火用を使い、回転力の伝達も自転車部品ですから、とんでもなく素人っぽい奇妙な風車発電です。高さ5メートルの第1号機では、風車のブレードはポリ塩化ビニル・パイプを加熱加工したそうです。それでも12ボルトの蓄電池に充電が出来て、4つの電球と、2個のラジオ、携帯電話の電源になったのです。

 CNN記事に「風車を作るんだと話すと、だれもがぼくを笑った。あいつは頭がおかしいといううわさが、村中に広がった」という中で3カ月、電球が光ったとき「これでもう頭がおかしいなんて言われないと思い、ほっとした」とあります。ユーチューブにある「Moving Windmills: The William Kamkwamba story」では「教科書の風車も誰かが造ったのだから自分にも出来ると思った」と語っています。5基造った風力発電は、地下深くにあるきれいな井戸水の汲み上げなどに使われています。

 評判が広まり、各地から見学者が急増、政府から認められて大学にも行けたカムクワンバ君のサイトは「William Kamkwamba, author, "The Boy Who Harnessed the Wind," and Malawi Windmill Maker」です。発電機の構造図も載っていて、お金が無い中での苦労がしのばれます。戦後の日本を見る感じもあります。

 現在は米国でのテレビ番組出演や著書のサイン会など忙しそうです。自叙伝のタイトルは「風をつかんだ少年」とでも訳すのでしょう。アフリカからこうした成功物語を聞くことは少なかったと思います。アジアに比べ発展の足取りが遅いアフリカから、これに刺激され、続く若者が多く出れば世界はかなり変わるはずです。「マラウイの少年、独学で風力発電に成功」(風に聞け)は「核廃絶のオバマ大統領の政治的発言力は大きいもののその実行力はわからない」「むしろ,この少年のほうがある意味ノーベル賞ものと言えなくもないような気がする」とコメントしています。