第192回「米軍アフガン増派へ違和感と目を引いた草の根」

 オバマ大統領はアフガニスタンへの米軍3万人増派と再来年夏からの撤退開始を打ち出しました。既に米軍だけで6万8000人、NATO加盟国など42カ国から5万人が駐留しているのに、対タリバンの軍事情勢は好転するどころが泥沼化しています。「政府、追加支援要請を懸念 アフガン新戦略」(47News)は「増派には1年で約300億ドル(約2兆6千億円)の費用が必要とされる。北沢俊美防衛相は」「『オバマ政権はアフガニスタンのベトナムやイラク化を懸念しており、日本にさらなる援助を要請してくる可能性が大きい』との見方を示した」と伝えています。米国民の支持もなく、多額の軍事費を浪費するだけに終わる恐れが強いと思います。

 中東報道研究機関「メムリ」が気になる緊急報告を出しています。「アルカーイダの健在と対テロ戦争の失敗」は「アメリカの愚かさと、アフガニスタンとイラクにおける戦争の失敗、さらには、アラブ人とムスリムに屈辱を与えようとした前(ブッシュ)政権のせいで、アルカーイダは世界的な組織になった」「アルカーイダは現在西側で主要な作戦を行っていない。それは、アルカーイダがアフガニスタンとイラクで容易に米軍に接近できるためだ」と手ぐすねを引いて待ちかまえているとしています。

 もうひとつの報告「パキスタンはアフガン・タリバンとアルカーイダを支援するな―アフガン人ジャーナリストの声―」は「外国部隊の増派は、タリバン排除のため駐留している部隊の助けにはなる。しかし、アフガニスタンの完全修復にはならない。そもそもアメリカやヨーロッパ、いやアフガニスタンの指導者すらも、アフガニスタンを国家として認識せず、戦場と考えている。これが根本的な問題である」「アフガニスタンの国民の安寧は二の次である」と指摘しています。

 アフガニスタンの紙消費量は年間1人当たり20グラムで、世界最低です。先進国に比べれば1万分の1、子ども達にノート1冊すら渡らない水準で、これを何とかしなければいけないと、先日の「アフガン支援50億ドル、これでノートの雨を」で訴えたばかりです。民生を考える草の根の動きが11月末「青空教室で使ってね ランドセル2600個、アフガンへ」(朝日新聞)で伝えられました。これまでに5万個が送られており「ランドセルには寄付で集まったノートや鉛筆、クレヨンなどを詰めた。仏事などで少しだけ使われて不要になったロウソクも寄せられており、電灯がないアフガンで役に立つという」

 「JOICFP (ジョイセフ) | 想い出のランドセル募金」の「ランドセルが語るアフガニスタンの教育事情」で「今でも男女が就学年齢に達しても約 50 パーセントは学校に行けず、義務教育を受けていません。 2003 年の成人非識字者数は 1100 万人です。現在でもアフガンの国民の識字率はわずか 28.7 パーセントです」と23年間にわたる長い内戦の後遺症と惨さが語られています。

 【参照】第156回「失敗国家ランクと紙消費量のぴたり」