医療崩壊阻止へ疑問あり、中医協診療報酬改定 [BM時評]

 中央社会保険医療協議会(中医協)が2年に一度の診療報酬改定を答申しました。医療崩壊問題について自公政権の感度が悪すぎ()、崩壊阻止に向け今回の政権交代に大きな期待が集まっていました。10年ぶりに診療報酬総枠をプラス改定した上での配分見直しですが、医師ブログの間では不評です。制度の根幹を変えずに係数だけいじるのでは現状を変える力が弱すぎます。

 各紙の社説が一斉に取り上げていて、読売新聞の「診療報酬改定 中医協の変化を医療改革に」は「急性期入院医療には、このうち4000億円が振り向けられ、救急や産科、小児科など過酷な勤務を強いられる分野に手厚く配分された。難しい手術の報酬を3〜5割引き上げるなど、ある程度のメリハリをつけた」診療所と病院」の再診料の690円統一と、受けた医療の費用細目が分かる診療明細書の発行義務づけの「長年の懸案も二つ、決着させた」「進展したのは、政権交代が結果として中医協での日医の影響力を低下させたことによる」と一応の評価をしています。

 メディアの評価が「一歩動き出した」であるのに対して、医師ブログは現場を変えられるかをみています。「勤務医の待遇改善にはほど遠い・・・」(東京日和@元勤務医の日々)は「どうせダメとは思いましたが、今回の再診料統一では、勤務医の待遇が改善することはないでしょう」「確実に医療機関側は、今回の改定で、お金を受け取りますが、一方、勤務医の残業時間が削減するとは思えないのです」と断じます。正式な労働協定も結ばないで医師に長時間の残業を強いている医療現場、さらに診療報酬は診療機関の懐に入り、医師の待遇を直接改善するものではない仕組みが壁になっています。

 再診料が下がる診療所側では「予想通りのヒドい話...」(元気に明るく生きて行ける社会のために、医者のホンネを綴りたい)が「最初から、こうなるとは思っていた」「事業仕分けの際、財務省は、例のデタラメデータ(開業医が2500万、勤務医が1400万の収入がある、ってやつだ...)を振りかざして、医療費をほとんど実質的に上げないようにたくらんだ。民主党には、これをひっくりがえす力がまだ足りなかった」と指摘します。再診料20円の引き下げでも、借金を重ねてやりくりに苦労している診療所には響くと言います。「私の経験から言えば...(つい最近、ほんの数年前のことですよ..)患者が20人/日くらいになって、やっと診療報酬で年間約2000万売り上げるようになったとき、年間の経費の支払は1800万円くらい」「その差額、なんと年間200万!」「つまり、年収200万だった」

 民主党が総選挙で言っていたことを実現するなら、今回を相当上回る規模の診療報酬引き上げが必要でしょうし、それが医師に回るように担保されなければ医師立ち去り型の医療崩壊を防ぐことは出来ません。開業医に24時間態勢で電話相談に応じるなら再診料30円加算するとか、過酷勤務を助長する仕組みが導入されるなど気になるところもあります。早急に仕組みそのものを変えなければなりません。