マスメディアの怠慢極まる1.3兆円自然増報道 [BM時評]

 2011年度政府予算編成で概算要求基準が話し合われています。この中で1兆3000億円もの社会保障費自然増はそのまま認める点を、マスメディア各社とも何の検証作業も無しに「垂れ流し報道」しています。予算案の総額を膨らませないで巨額の突出部分が認められたのですから、各省庁の経費1割減という動きにもなって反発を招いています。この報道構図は、読者・視聴者から託されたものがある商業ジャーナリズムの有り様としても「怠慢甚だしい」と指摘せざるを得ません。

 厚生労働省の「長妻大臣閣議後記者会見概要」で記者が「社会保障費の中に人件費や事務費などまだ削減出来る余地があるかもという議論については如何でしょうか」と尋ねて、大臣が「この1.3兆円にしても不正などを放置をして膨らんでいるということではありません。そういう施策についても厳しく取り組んだ上でも1.3兆円ということになるということであります」「社会保障費の中にも事務費などもありますが、これについても省内事業仕分け、あるいは行政刷新の事業仕分け等で厳しく取り組んでいるところでありまして、そういう前提の下でも必要なお金が年々自然増という形で増えていくということだと理解をしています」と答えているのが、唯一の疑問とやり取りです。

 1兆3000億円の巨額さを思えば、せめて内訳でも取材して前年比実績とで比べてみるべきです。それすらありません。昨年、2010年度の際の記事に「2010年度予算の概算要求基準(シーリング)をめぐって」(日本精神科病院協会誌巻頭言)がありました。「年金や医療費の自然増1兆900億円は全額認められ,社会保障費は過去最大の25兆1,000億円となり,一般歳出の約半分を占めることになりました」「厚生労働省大臣官房会計課によると,社会保障費の自然増分の内訳は,医療が3,000億円台半ば,年金が3,000億円強,介護が1,000億円強,そのほかが2,000億円とのことです」

 1年で自然増分が2000億円以上も増えている点は驚きです。「高齢化に伴う増加」とさらっと説明されていますが、結論だけ伝えるのではなく、どうして抑制できないのか一般大衆に分かる、突っ込んだ解説を付けるべきです。