株式配当ばかりの日本企業:通説と正反対 [BM時評]

 日経新聞の5日付「経済教室」で野間幹晴・一橋大准教授が興味深い分析と主張をしていました。見出しは「『通説』と異なる日本企業 有配企業の比率、高水準」です。1985年から2009年にかけて上場企業で配当をしている有配企業の割合が、米国では73.2%から30.2%まで下がったのに、日本は2009年に86.5%で1985年以降ずっと高止まりしているそうです。この結果、日英独米加の5カ国で日本だけがダントツ高有配率の国となっています。

 従来の通説とはこうです。「配当政策に関する通説とは『米国企業は株主還元を手厚く行なっている』というものである。たとえば『米国企業は株主への配当が多いのに対して、日本企業の配当性向は低い。日本企業も配当を通じた株主還元を強化し、企業価値をたかめるべきである』などといわれる。一方、投資政策に関する通説では『米国企業は短期的あるいは近視眼的な投資を行なうのに対して、日本企業は長期的な視野に基づいて設備投資や研究開発投資を行なっている』と論じられる」

 野間さんの分析結果は、これとは全く逆になっています。成長著しいグーグルは一度も株主に配当を払ったことがないといいます。投資先を見つけて成長を図り、企業価値を高めることが株主への本当のアピールになります。投資先がないから配当している日本企業ばかりでは、経済が活性化しなくて当然です。日本企業は設備投資、R&D投資を削減する傾向が欧米諸国の企業より強いことも分かってきています。雇用が増えない、税収が伸びないのも当然です。野間さんは「経営者が『投資先がない』というのは、責任放棄であると考える」と主張します。

 Twitterでは全く反応が記録されていません。興味深い話なのに、ネットに出ないと駄目なのかな。ブログでは「日本企業の配当政策、投資政策」(吉永康樹のCFO News)が「これは経営者の意識の問題ではなく、経営能力の問題です。能力のある経営者がとても少ないことが今の日本企業の最大の弱点なのです」「日本国内にすぐれた経営者がいないのなら、海外から来てもらうしかないでしょう。今後はグローバル企業に限らず、内需型企業であっても希少な資源である経営者を世界に求めるというのが普通になるかもしれません」と痛切な指摘をしています。