死刑回避、超長期日程、裁判員裁判に難題例 [BM時評]

 裁判員裁判で非常に難しいケースが相次いでいます。東京地裁で1日に判決があった「耳かき店員」2女性刺殺事件では死刑が回避されて無期懲役になりました。こちらも死刑の可能性があって裁判日程が40日間にもなる鹿児島地裁の高齢夫婦殺害事件では、450人もの裁判員候補を用意したのですが8割に当たる404人が辞退し、結局、34人が1日の選任手続きに出席しました。これまでにも指摘してきた裁判員制度の問題点が表面化しており、放置するのは問題でしょう。

 死刑まで真剣に議論したのが、今回の事件です、毎日新聞の「東京・西新橋の2女性刺殺:地裁判決 裁判員会見(要旨)」で女性の裁判員が「この2週間、ふとした時に遺族や被告の顔が浮かび、心安らげる時間はなかった」「遺族の陳述を聞いたりして気持ちが高ぶったが、皆さんの意見を聞いて冷静に判断した」と述べています。負担の大きさが分かります。

 J-CASTニュース《「耳かき店員殺害判決」プロの裁判官でも無期懲役》にあるコメント「縁もゆかりもない、何の恨みもない人間に対し、絞首刑の踏み台を外すスイッチを押すわけですから、被害者の死と被告の死の狭間に入って感情が揺れたと思う。無期にしたからといって、遺族の方はどう考えるかという思いにずっとかられていくでしょう」「裁判員に初めから死刑だ、無期だという判断を求めるのは厳しい。小さい刑から馴らして行ったほうがいい」は妥当と思えます。

 被告が無罪を主張していて、長期裁判が必至の高齢夫婦殺害事件も裁判員裁判には馴染まないと考えます。《鹿児島・夫婦殺害:裁判員選任 「なぜ日程40日間も?」 /鹿児島》(毎日新聞)は超長期に仕事を休む裁判員の事情をこう伝えました。「選任手続き前、20代の女性保育士は『辞退も考えたが、勤め先が理解してくれた』と話した。その一方、『勤務先から”何でこんなに長いのか”と言われた。有給は4日だけで残りは普通の休み。会社もどうしていいのか分からなかったと思う』という境遇の20代のアルバイト女性もいた。さらに、鹿児島市の事務職の女性(25)は『仕事の引き継ぎはしたが、すべて任せることはできない。裁判のない土曜日は出社するつもり』と覚悟していた」

 辞退を認めているとはいえ、8週間も平日を潰せる勤め人がどれほどいるでしょう。死刑廃止論の人を選任するかどうかという問題も含めて、裁判結果にバイアスが掛かる問題点を洗い直すべきです。

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