第248回「原発所内の電源回復が大惨事を防ぐには必須」

 福島第一原発事故で《被曝の恐怖、余震…真っ暗な建屋で決死の作業》(読売新聞)のような記事があちこちで見られます。事故は発生から何日も経過するのに現場には明かりをとる電源すら無いのです。短期に収拾する望みはなくなり事故対応が長期化することが明確になった現在、大惨事を防ぐためにも「原発所内の電源回復が欠かせない」と指摘しておきます。

 今日の日経新聞社説にある「一連の事故の根本にあるのは、原子炉の冷却能力の不足だ。もとから原発にあった強力な注水装置が津波の被害で動かず、消防ポンプ車などで応急的に原子炉に海水を送って核燃料を冷やしている」事態を解決するには「急がば回れ」です。早くから現地に届いているディーゼル発電装置多数を所内電源に接続して、本来の機能を回復するべきです。

 接続しようとしても「受電設備が水浸しで繋げない」と伝えられています。ネット上で翻訳されている《■「放射性物質の放出は数ヶ月続く可能性」ニューヨーク・タイムズ》に、米国で設計された同じ型の原発を知る技術者のコメントがあり「問題は津波で浸水した地下室にある切り替え設備で電気系統の接続を行わなければならないことにある。『現地に発電機があっても、まず地下から水を汲みださなければならない』」のですが、この緊急時に乗り越え不可能な障害とは思えません。

 電力会社なのですから子会社を含めて即戦力になる電気工事チームはいるはずです。使われている部品もはっきりしていますから、浸水で使えなくなっていても代替品の入手も簡単です。事故対策を指揮している部門が少し長い目の戦術すら考えず、極端な対症療法、「もぐら叩き」を繰り返しているのが現状でしょう。使用済み核燃料プールの冷却といった日常的には容易な管理が欠けて4号機で重大な放射能放出につながっているのを見ても、「急がば回れ」作戦を推奨します。原発を管理する指標がどれほど多いか、少し現場を知っていれば本来機能回復なしに手探りを続ける現状の危うさは自明です。

 原発事故としての重大度は既に米スリーマイル島事故を超え、旧ソ連チェルノブイリ事故に迫ると海外で評価されつつあります。早期に電源車が現場到着しても使えなかったボタンの掛け違えから事態は悪化の一途です。今ならまだ大惨事になるのを食い止められるはずです。