原発運転再開:安全指針の担保外す政府こそ違法 [BM時評]

 電力供給が全国的に不足する夏場を前にして、定検あけ原発の運転再開が議論されています。「地元の理解」がポイントとされていますが、見当違いもいいところです。国による安全審査の指針が福島事故で崩壊したのが事の本質です。経済界からの「安全を確認して早く再開を」との声は無理難題に近いのです。経済産業相は原発地元の知事らに運転再開への理解を求める意向ですが、安全審査指針の担保を外して運転するのは違法と知るべきです。このピント外れぶりはマスメディアの社説などにも共通です。

 13日の原子力安全委定例会後の記者会見で班目春樹委員長が「地震や津波の問題だけでなく、安全設計に関する指針や防災の指針も適切でない部分があり、明らかに見直さなければならない」「抜本的な見直しになるが、何年もかかっては意味がない。できるところから直していきたい」と述べたと「原発安全指針見直し 今月にも」は伝えています。

 原子力安全委員長が原発建設で依拠した指針に不適切な点が多数あると言っているのに、地元の知事たちはどうやって目の前にある原発の安全を確認できるのでしょうか。事態は第260回「過失特大の政府賠償責任が論じられぬ不思議」で指摘した通りに動いています。中央の政治家、官僚、マスメディアの能力の低さは救いようがありません。名官房長官・後藤田さんが生きていたらどう裁くか、考えてしまいます。原子力安全委にはOBの力も総動員して「暫定的な形」だけでも特急で仕上げさせたのではないでしょうか。