底は打った貿易収支、残る余裕を再建に生かせ [BM時評]

 年の瀬が近づいて来年はどうなるのか、東日本大震災の痛手が心配でしたが、今年の貿易・サービス収支は小さな赤字転落に止まり、来年は頑張って持ち直す見込みが語られています。資本の移動を見る所得収支は国際的に債権国としての基盤が出来て堅調です。経常収支の赤字を心配する必要は、今しばらくはありません。この余裕を経済・社会システムの再建に生かしたいものです。

 10月までの貿易収支速報値が出たのでグラフにしました。2008年のリーマン・ショックによる落ち込みから回復した直後に、東日本大震災で大打撃を受け、それでも既に底は打った状態にあることが読みとれます。  日本貿易会の「2012年度わが国貿易収支、経常収支の見通しについて」は2011年について「貿易収支は、輸出の減少と輸入の増加により大幅に減少し、かろうじて9,420億円の黒字にとどまる。サービス収支は、旅行収支などの悪化を受けて1兆7,280億円と赤字幅が拡大。この結果、貿易・サービス収支は3 年ぶりに7,860億円の赤字に転じる。一方、所得収支は、円高や金利低下にもかかわらず、順調に伸びて黒字は14兆2,020億円に達する」としたうえで、2012年は「経常収支は、貿易・サービス収支が再び黒字に転じ、所得収支も前年度並みの黒字となることから、16兆1,940億円とほぼ2010年度の水準に復帰する」と見込んでいます。

 「溜池通信 vol.482」が1996年から経常収支の動きをまとめているので、グラフを引用します。  2000年までの貿易収支で稼ぐ日本の姿が変貌したことが一望できます。やがて海外投資の果実を得られるようになり、2008年以降は所得収支の黒字が主役になっています。円高騒ぎは製品輸出面では不利ですが、海外企業買収などの資本投資には有利なのです。もっと長期を展望すれば経常収支の赤字がありうると指摘されはじめ、そうなれば国債の国内消化が危ぶまれるようにもなります。しかし、まだ時間はあります。「欧米の経済不安深刻化は愚かな日本を相対化」してくれていたのですが、来年は本格的な再建への議論をしなければなりません。