第293回「放射能海洋流出拡大なのに事故収束宣言とは」

 政府は16日に「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される」と福島原発事故の収束を宣言しました。放射性物質の外部飛散が大きく減り、敷地境界での線量が下がったことを根拠にしていますが、表に見えにくい海洋への放射能の流出はむしろ拡大している証拠があります。水産庁の「水産物の放射性物質調査の結果について〜12月16日更新〜」にある一覧表から魚種別グラフにして以下に掲げます。  福島沖で採取された魚の1キロ当たりセシウム含有量は夏の終わりにかけて減少する傾向を見せていましたが、秋に入って反転、増加しています。特にヒラメは暫定基準の500ベクレル前後をたびたび示し、11月16日に4500ベクレルの最大ピークを記録しました。やはり底魚のアイナメも11月30日に1780ベクレル、12月14日に1940ベクレルと非常に大きな汚染値を出しています。

 1カ月前に書いた「福島原発から海へのセシウム流出が再発生か」では、原発建屋地下の汚染水と地下水が出入り自由になっている問題を指摘しました。しかし、ヒラメの汚染が春から夏のレベルを超えて進んでいる点からは、もっと深刻な事態もあり得ると考えられます。圧力容器から落ちた溶融核燃料が、東電の主張するように格納容器内に止まらず、底を突き破って地下水と接触し始めている恐れです。

 「1号機の解体撤去は絶望的に:福島原発事故」で検討したように、炉心溶融を起こして格納容器に落ちてくる際に底にどれだけ水があったかで、格納容器内に止まるか、地下に抜けるかが決まります。ここは本来は水が無い場所で、東電の推定シナリオは希望の限りの最善と見えます。

 得られている水産物観測データの検討もしないで、年内収束宣言に突き進むとは困った政府です。福島第一原発の地下で何が起きているのか、横方向のボーリングその他、取れる方法は何でも試みて検証する必要があります。いくら「冷温停止」と称しても、核燃料があるとされる格納容器底部の温度は未知なのですから。

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