厚生年金積立金の枯渇まで10年ほどに見える [BM時評]

 12月に公表されたばかりの《平成22年度厚生年金保険・国民年金事業の概況》は、厚生年金積立金が22年度末まで4年間で25兆円も減って114兆円しかないと報告しています。23年度予算では8.4兆円を取り崩すことになっており、受給者の増加で年々増える一方です。来年度予算ではさらに消費税増税を先食いした年金交付国債分2.9兆円の取り崩しが加わります。運用での損失も膨大で、現状の無為無策で行けば積立金枯渇まで10年ほどに見えます。  上のグラフは積立金の推移に運用利回りの利率を書き込んだものです。「運用利回りは、平成18年度3.10%、平成19年度△3.54%、平成20年度△6.83%、平成21年度7.54%、平成22年度△0.26%」とリーマンショックの激動が入って乱高下しています。この5年間で保険の実質収支は計19兆円の赤字でしたから、25兆円の積立金目減りの内、6兆円は運用損だったわけです。

 さらに年金積立金管理運用独立行政法人の「最新の運用状況ハイライト」によれば、東日本大震災で打撃を受けた今年の運用は悲惨です。第2四半期だけで3.7兆円のマイナスになっています。今年度末で100兆円を割り込んでいる恐れが大になっています。欧米の経済不安が続く来年も順調ではないでしょう。

 政府は「試算」の形で厚生年金積立金の枯渇が考えられるケースを示しています。デフレが続き、経済成長率もマイナスで名目賃金の上昇率もマイナスで行けば2031年度に枯渇するという、あり得ない例を提示していますが、目の前で起きている積立金の目減りは見通せていません。ほんの2年前に行われた「平成21年財政検証結果」は140兆円台の積立金が続くとしていました。あまりにも杜撰だったと言うべきでしょう。自公政権下の「100年安心プラン」など夢のまた夢でした。

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