原発再稼働は事実上無理、夏ピーク対策に舵を [BM時評]

 原発再稼働に向けて政府が推進してきたストレステスト1次評価が関西電力大飯原発3、4号機について原子力安全委が了承して終わりましたが、地元からの反応、メディアの論調に厳しいものが多数あります。与党民主党の原発プロジェクトチームですら「時期尚早」とする提言を出している現状では、夏場の再稼働は事実上無理になったと考えるべきです。既に3月末になり、夏場のピーク需要対策に舵を切らないと物理的に準備が間に合わないと認識すべきです。

 毎日新聞の《大飯原発:安全評価 県や立地自治体など、国の動向注視 「問題ない」確認に /福井》が伝える地元福井はこうです。《満田誉副知事は再稼働について「福島の事故の知見を生かした安全基準など、県が国にお願いしている内容にどのような判断がされるかにかかっている」と述べた。おおい町の時岡忍町長は「ストレステストだけでは不十分。暫定的な安全基準と、これに基づく安全対策について早く答えを出してほしい。回答を得なければ前に進めない」と話した》

 地元が求めてきた暫定的な安全基準を示せていない点でアウトです。また最初から安全委は1次評価が安全を担保するとは考えていません。過酷重大事故を扱う2次評価こそ必要という立場です。京都や大阪の市長も反対です。加えて野田首相は消費税増税法案での党内調整、閣議決定で手一杯です。これまた異論が多い原発再稼働で党内取りまとめを図る余裕はありません。日経新聞などが「増税法案を国会に提出するまでは、再稼働問題で党内に波風を立てるのは得策でない」雰囲気にあると報じています。

 東電管内はこの夏が猛暑ならば最大13%の供給不足と政府は試算しています。夏の最大需要期を原発全面停止状態で乗り越えられるか、その検証を急ぐなら朝日新聞が24日朝刊で伝えた《冬の電力、余裕あった 関電、供給力を過小評価》は有意義でした。「節電要請が始まった12月19日からの3カ月間で供給力に対する電力の使用率が90%を超えたのは5日間」であり、最高でも93%に止まりました。供給力が見通しよりも300万キロワットも多い2730万キロワットあり、最大需要は見通しより87万キロワット少ない2578万キロワットでした。

 深夜の余剰電力で水を汲み上げて昼間のピーク時に発電する揚水発電が「予想より199万キロワット増えた」となっています。昨年夏に東電が意図的に非常に厳しい電力需給を公表し、それには1050万キロワットの揚水発電分が隠されていた事情と似ています。各電力会社が出している供給計画は精査しなければなりません。

 民間の自家発電や太陽光発電、コジェネなどの力も借りるべきで、その前提になる電力買い取り価格など条件整備を急がないと、時間切れで導入できずに終わりかねません。「原発無しの夏確実、太陽光発電でピークカットを」で指摘しているようにポテンシャルは十分高いのですから、政治がいま動くべきはこちらの分野です。

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