福井県の抵抗:真意は暫定基準に格下げ実質撤回か [BM時評]

 大飯原発再稼働で福井県の同意が得られないまま細野原発相は東京に引き返す羽目になりました。西川知事に面会すれば喜んで「イエス」と言ってもらえると考えていたようですから、野田政権は「ぼんくら」の集まりと断言できます。再稼働のための新安全基準を30日、政府は関西広域連合を稼働容認に引き込むために「暫定基準」に突然格下げしました。本格安全基準として審査手続きを進めてきた地元福井県の立場が無くなったことに、まだ気付いていないとは政治家として中央官庁官僚としてレベルが低すぎます。

 4日に福井でのやり取りをもっとも詳しく伝えているのはロイターで、国内マスメディアの報道では状況が判りません。「大飯原発再稼働の必要性、首相は国民に訴えを=福井県知事」はこう報じています。

 《西川知事は「政府部内からいろいろな見解、矛盾した主張が出て県民にとって迷惑」と指摘した上で、「再稼働の必要性について首相は国民に訴えていただいて、様々な疑問に答えていただくことが国民の安心と支持につながる」と強調した。西川知事は政府側に対し「夏場だけの稼動とか大飯原発に限定した稼動に限定した一部の言い方があるが、政府がそうした考え方ではないと示して頂きたい」と要望した》《さらに西川知事は、再稼働に向けたストレステスト(耐性評価)で原子力安全・保安院の審査が終了した原発についても「新規制庁の設置を待つことなく、原子力安全委員会が責任をもって審査する立場にある」と畳みかけた》

 毎日新聞の《大飯原発再稼働:福井知事「判断のボールは国にある」》は「首相が原発の安全性に責任を負い、原発を中長期の電源に位置づける考えを明確にすることが再稼働に同意する条件になるとの考えを示した」とも伝えています。

 西川知事としては出来ることなら元の本格基準に戻して欲しいのでしょう。県原子力安全専門委の審査はそれが前提で進んでいるし、県民への説明も暫定安全基準では困ります。それが難しいなら、実質的に暫定基準格下げ撤回と受け止められる説明を、野田首相から国民に対して示して欲しいのでしょう。

 31日の「大飯再稼働の稚拙な仕掛け、橋下流の限界見た」で指摘した「安全基準を格下げすることで限定稼働が出来る、一般人には理解しにくい『腹芸』」シナリオを書いた官僚は本当に罪作りです。この十数年、当座を乗り切るため、あるいは自分の代さえ受ければ善い、と見える中央官僚のパフォーマンスがあちこちで発生しています。「騙し」で取り繕う場面でないことが「原子力ムラ」官僚には分からなかったのでしょうか。いや、元はと言えば国の安全の元締め原子力安全委が了承していない新安全基準を、野田首相以下4閣僚の政治主導で決めてしまった点に錯誤の発端があり、それを関西広域連合が突いていました。構図全体に無理があったのです。

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