割り箸本格削減が日中の環境汚染改善を助ける [BM時評]

 終了した中国全人代で、中国の割り箸生産が年間800億膳にもなり自然環境への負担が大きいとの発言に注目です。中国にもともと割り箸使用はなく日本向け輸出箸の低級品が国内に流れ大量消費を招いてしまいました。日本の年間輸入221億膳の98%分を含めて、中国の森林伐採などで製造されている計算です。木を切るのは中国の勝手と割り切れない事情があります。春に中国から飛んできて悩ませられる黄砂は森林伐採で大地が裸になる結果、年々、酷くなっているからです。日中で知恵を絞って割り箸使用を本格的に削減できれば、環境汚染改善に間違いなく役立ちます。

 中国からの報道「中国で大量消費される割り箸、自然界の大きな負担に―香港紙」はこうです。《吉林森工集団(グループ)の柏広新(バイ・グアンシン)会長によれば、中国で生産される使い捨ての割り箸は年間で800億膳にものぼり、「標準的なサイズの割り箸を並べると北京市の天安門広場が360個分埋め尽くされる」とされる》《中国の国土面積に占める森林面積の割合「森林率」は20.36%で、世界139位。1人あたりの平均森林面積は0.145ヘクタールであり、世界平均の4分の1に過ぎない。柏氏は「使い捨ての割り箸による自然界への負担を解決するには1人1人が自然の浪費をやめてマイ箸を持ち歩くことと、割りばしに替わる代替製品を開発する必要がある」としている》  「木づかい.com」のウェブ《日本の森林を育てる「国産材割り箸」》から「割り箸の輸入量・国内生産量と国内工場数の推移」グラフを引用しました。日本国内の割り箸生産は21世紀に入って縮小してしまい、中国からの輸入が大半になりました。日本国内で造る6億膳ほどは《本来は捨てられる住宅・家具等の端材(=はざい:必要な部分を切り取ったときにできる余った木片など)や間伐材を有効活用して作られるため、国産の割り箸と「森林破壊」や「はげ山」などの問題とは次元が違います》と言えます。

 ところが、中国では森林をごっそり皆伐して割り箸を造ることが多いのです。最近はロシアやモンゴルから木材を輸入するケースも増えているそうですが、そこでも違法な伐採が行われています。加えて、日本では割り箸消費が下り坂になっているのに、中国では増加の一途です。2006年は450億膳だったのに580億膳にまで消費が増えた計算です。

 「日本の割り箸使用量は、年間227億膳。莫大な数字に見えますが、年間227億膳に要する木材は、日本の年間木材利用量の0.3%にしかなりません」「年間木材利用量は、外国産材を含む木材供給量7797万立方メートル」を手がかりに中国での割り箸生産が森林伐採に占める割合を出してみます。7797万立方メートルの0.3%は23万立方メートル、800億膳分なら82万立方メートルになります。2003年の数字しか見つかりませんが、中国森林伐採量は1215万立方メートルであり、その6.7%が割り箸生産分と無視出来ない割合です。

 大気汚染・重篤スモッグの深刻化をうけて北京市が「首都青空10年行動計画」を打ち出しました。黄砂を防ぐための植林計画も含まれています。木を育てる時間の長さを思えば、木を切らない方が遥かに有効です。中国に割り箸を広めてしまった日本として、なんとか知恵を出したいものです。

 中国では森林と関係する紙資源も大きな問題です。第197回「続・失敗国家ランクと紙消費量のぴたり」で年間1人当たり紙消費量が「2008年は中国が59.1キロと、世界平均57.8キロを初めて突破した」と紹介したばかりなのに、2011年は72.4キロと経済発展で3年で22%も増やしました。人口の大きさから紙資源危機を招く恐れが強いと考えられます。