第350回「PM2.5汚染の全国実況表示が日中で動き出した」

 微粒子PM2.5大気汚染の全国規模の実況を一覧できるシステムが日中両国で動き出しました。北京など地点情報で重篤スモッグと伝えられて、分からなかった広がりが一目で知れる上に、変動グラフが付く優れ物です。日本国内で言えば西あるいは北から汚染が拡散してくるので今後の見通しが立てやすいし、グラフがあれば一時的な高濃度か継続した事態なのかの区別が容易です。両国分ともネットで得られる画像を引用しながら紹介します。  日本のサイト「日本全国の大気汚染粒子PM2.5情報まとめ」は公的機関ではなく、様々な便利サイトを開発している「satoru.net」が作っています。環境省の「そらまめ君」からのデータを加工しています。従来はブロック別の実況しか分かりませんでした。過去に遡れる機能があるので、上の地図は全国各地で国環境基準を上回った3月24日14時を表示しています。この時点でPM2.5濃度が空気1立方メートル当たり72マイクログラム(国基準は35)と最高だった「岡山・大高」を、ランキングからクリックすると次のように表示されます。(なお、このサイトはブラウザを選び、インターネットエクスプローラは相性が悪く、グーグルクロームをススメます)  ここで「詳細ページを表示する」を選べば、次のように地図付きで「岡山・大高」過去24時間、過去1週間がグラフになって現れます。ここでは26日に24日分を表示させているので、24日は一時的に高かっただけだと知れます。もちろん汚染地図から自宅など最寄りの地点をクリックして過去の動向を見ることもできます。  中国の汚染状況は、これまで米国大使館チームが作る「北京大気汚染: PM2.5 リアルタイムの大気汚染指数」に頼って観察していました。以下が26日15時の画面です。中国は広いので各地点の関係がなかなか見えて来ません。  中山大学のチームが新たに作った「全国都市大気実況」は、二酸化硫黄や二酸化窒素、PM10などの指標も含む総合表示板です。同じ26日15時時点で中国全土のPM2.5状況は以下のメイン地図に表されます。北京から内陸部が悪化、上海や南部は良好です。  汚染度が高い北京や河北省周辺を拡大したのが次の地図です。石家庄市のある地点をクリックすると、グラフで24時間の内に中国の環境基準(青バー)を超えて1立方メートル当たり200マイクログラム前後を推移していると分かります。この時、北京市内も同様で中度から重度の汚染に移りつつあります。  全国的な土壌汚染データは国家機密を名目に公開を拒んでいる現状を考えれば、大気汚染でこのような即時・全国規模の情報公開をしている事自体が信じられないほどです。1月に広範囲で発生した重篤スモッグがいかに国民の危機意識を高めたか、如実に語っていると思います。第345回「中国で暴露、ぼろぼろの環境行政と水資源管理」で指摘したように、中国政府の環境保護部はあまり騒がずに淡々と惨状を流す姿勢のようです。

 【参照】「インターネットで読み解く!」
     第348回「抜本策無しと露呈するばかりの中国環境汚染」
     『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない