第359回「鳥インフルエンザ、死者減れど重症化が深刻」

 中国の鳥インフルエンザは患者発生が止まず、死者の発生は減ったものの回復した患者が少なく重症化が深刻な模様。警戒ムードも薄く大型連休期間に入っており、潜伏期1週間後の動向が注目になっています。2日の新華社電によれば、中国本土で確認の感染者は127人、このうち26人が死亡し、26人が回復となっています。死亡・回復とも患者の20%程度で、残る60%が入院したままの状態です。  WHOが公表している「発症時期確定患者報告」から、4月24日集計と5月1日集計分のグラフを並べました。割愛した3月6日以前の分には死者2人が含まれます。5月1日で合計の患者116人、うち死者21人(赤ブロック)が表示されています。見比べると、1週間で発生した死者は3月から発症の長期患者ばかりである一方、新規患者発生の勢いは持続しています。回復者の数は赤の死者数とほぼ同じですから、入院して長期療養になっている重症ケースが増え続けているようです。

 ロイターの《中国で拡大する鳥インフルエンザ、「深刻な脅威」と科学者が警鐘》はこう報じました。《WHOは、この型を「最も致死性の高いウイルスの1つ」と位置づけている》《初期研究ではウイルスにいくつかの懸念要素があることが分かっていると指摘。人から人への感染がおきやすいタイプへの2件の遺伝子変異もみられるという》《感染すると、重篤な肺炎、敗血症、臓器不全を引き起こす可能性が指摘されている》

 北京市初感染の男児のように軽症者で回復する例が最近増えています。初期に多発の死者周辺に患者が多くいて受診しなかった可能性が考えられます。健康保険が整っていない中国、特に不利な農業籍の地方出身者は受診をためらわれると見られます。

 サーチナの《鳥インフル、中国政府が恐れる「治療費なく、病院に行けない人々」》は李克強首相が治療に滞りが無いよう現場を督励したと伝えています。

 《同通達は、貧困な人がH7N9型鳥インフルエンザにかかって治療を受けた場合には補助金制度の適用対象になり、身分が特定できない患者に対しても、緊急基金による補助金支払いの対象になると説明した。これまでに、個別の地方政府が、H7N9型鳥インフルエンザの治療についての予算を計上したとの報道も相次いだ。しかし、低所得層の人々にとっては、インフルエンザの症状が出ても自分自身でH7N9型鳥インフルエンザに感染したかどうかを知る手立てはなく、医療機関に出向いて診察を受けることに二の足を踏むケースが多発するであろうことは、十分に考えられる》

 上海市だけは新規患者発生が激減と言われますが、「鳥インフルエンザ感染源の探索は方向違いか」で指摘した感染源問題は未解決です。全体には第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」で心配した通りの状況であり、大型連休後の経過をにらんで、まだ警戒を怠れないようです。

 【参照】インターネットで読み解く!「インフルエンザ」関連エントリー