第374回「対岸の火事でないPM2.5、抜本的な浄化支援が必要」

 7月下旬の1週間、関東以西の日本列島は微粒子PM2.5に覆われ、変動はあるもののほとんどの測定地点で環境基準を超える有様でした。汚染源の中国から聞く対策は愚かしく、強力な浄化支援で身を守るべき事態です。中国環境保護部によると、今年上半期に主要74都市で中国大気汚染基準を満たさなかった日が45%もあったといいます。しかも20%の日は中度以上の汚染という酷さ。スモッグ報道写真が印象鮮烈な北京を中心にした河北エリアは基準を満たさなかった日が69%、外出しないよう呼びかける重度汚染が観測された日が21%もありました。(人民網参照  上に引用した国内の研究グループ「SPRINTARS」による越境汚染が酷い予測を見て、第373回「中国大気汚染が高濃度で関東から西日本を覆う」を7/25に書いています。環境省のデータを利用している「PM2.5まとめ」でウオッチするそれから1週間、常に200〜400地点で大気1立方メートルあたり35マイクログラムを超える状態が続きました。通常なら下の図のように、韓国を越えてきた汚染大気は早く拡散するのですが、この時期、日本海に梅雨前線を抱えて停滞が続きました。何日も通して環境基準超が持続という観測地点さえありました。

 健康への影響を一般の市民も感じ始めています。日経新聞が《PM2.5で市民7割が「喉の違和感」 福岡市調査》で《アンケートは、3〜5月にPM2.5の1日の平均濃度が国の環境基準値を超えた後の3回と、黄砂飛来前後の4回、メールを通じて実施。各回約1100〜約1800人の市民が回答した。このうち何らかのアレルギー症状を持つ人は56%。PM2.5の飛散後に目のかゆみを感じた人は70%、くしゃみが出た人は60%に上った。市環境保全課は「特にアレルギー症状を持つ人は、市の予測情報を活用して対策をとってほしい」としている》と伝えました。

 人民網(7/12)の《中国、煙霧対策に本腰 「大気汚染防止計画」近く発表》によれば27兆4300億円の資金を投入する計画が7月中にも発表のはずでした。《計画の中で特に注目すべき点は、今後5年以内に大気の質をある程度のレベルまで改善することを明確に示している》といいます。しかし、8月になっても進展がありません。

 未だに汚染発生源を移転して済ませる発想が以下のように見られますから、これは道遠しです。《計画の改正作業に携わった専門家は「例えば、北京・天津・河北地域では、石炭燃焼を大幅に削減するという目標が掲げられた。というのも、この地域の大気汚染は、石炭燃焼に起因するところが大きく、汚染物質の排出量が多く、受容能力を超えているのが、この地域の環境汚染の主因となっているからだ」と指摘した。また、この専門家は、「計画では、大気中の汚染物質含有量の減少を目的として、生産能力の一部を、汚染がそれほど進んでいない他の地域に移転することについても言及している」と続けた》

 中国に多い石炭火力発電などで日本が持つ環境技術を使えば、石炭からの汚染物質は中国の現状に比べ10分の1以下に封じ込められます。東京都の呼びかけを袖にした北京市は北欧のフィンランドと提携しましたが、民間レベルでの環境技術売り込みを含め隣国日本から支援を推し進めたいと考えます。最近見た中国側と初の技術協力のニュースで《微小粒子状物質:日中韓で大気汚染研究 県環境科学国際セン、越境するPM2.5調査 /埼玉》があります。期待できる実態解明研究なのでこれをテコにして、実効がある押し掛け協力に発展させたいものです。

 【参照】「インターネットで読み解く!」
     遅々として進まぬ中国の大気汚染への実効対策
     『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない
     第343回「中国大気汚染の絶望的な排出源構成と規制遅れ」
     第345回「中国で暴露、ぼろぼろの環境行政と水資源管理」