第403回「暗雲続くアジアの若者層、失業率は高止まり」

 国際労働機関(ILO)が世界の雇用情勢は改善されていない、いや危機的とする報告を公表しました。地域別の項目も読んでみると、成長が持続しているアジアでも若者層の失業率は近い将来も10%超の高止まりです。マイナス成長の南欧諸国で若者に職が無い事実はよく知られるようになりました。成長しているアジアには大人口の重石がある上に、経済成長が必ずしも職を増やすように働いていない政策的な、あるいは技術的な隘路があるようです。アジアと言っても戦乱と政治的混乱が続く中東は若者層の失業率が28%もあるので除外して、ASEAN諸国から「東」と、インド・バングラデシュなどの「南」のデータを次のグラフにしました。  15〜24歳の若者失業率の今後は南で10.4%と横ばいになるのに対して、東では2014年の10.5%が2018年の11.6%へとじりじり上がっていきます。雇用増加率が南では0.4%とわずかなプラスが維持されるのに、東では2014年のマイナス5.7%など厳しい状況が続きます。多くの国の金融と財政との政策協調の欠如が、企業に安定した長期雇用創出をためらわせていると言えますし、中国でiPhoneなどアップル製品の大量生産を請け負っているフォックスコンがロボット化に注力しているように職の創出そのものが阻まれています。原報告は20日公表の「Global Employment Trends 2014〜Risk of a jobless recovery?」です。2013年の世界の失業者数が前年比490万人増えて2億180万人になったと推計されています。

 最大の人口を持つ中国では、これまでも言われてきた大学卒の過剰が就職戦線をいっそう激しくしています。「大卒予定者727万人、中国は史上空前の就職難」は「1997年7月にタイから始まったアジア通貨危機による経済不況に刺激を与えようと、中国政府は1999年に高等教育システムの拡大を決定し、大学の入学枠を大幅に増大した。この結果、1999年には85万人に過ぎなかった大学卒業生は、2003年には212万人となり、2005年:338万人、2006年:413万人、2008年:559万人、2009年:610万人、2012年:680万人と年々増大し、2013年には699万人となった。そして、今年はついに700万人の大台を突破して727万人となると予定されている」と伝えています。

 2013年の最終就職率を85%とみて、大学院進学者などを差し引いて2014年は就職浪人と合わせて824万人が新規採用を求めて競うと見立てます。こんな急拡大ペースで大卒にふさわしい職が増え続けるわけがありません。

 2番目の大人口国インドでも大学進学率はまだ中国の半分、15%程度ながら急上昇中です。古来からの閉鎖的階級社会を飛び越える個人の能力発揮は注目されていますが、それは例外的なようです。「変革迫られるインドの大学教育」はこう説きます。《難関大学の卒業生が米欧の大企業から年俸1000万円を超える高給で採用される、という事例もよく報道される。8月上旬にもインド情報技術大学(IIIT)アラハバード校の卒業生2人がSNS大手の米フェイスブックに年俸600万ルピー(約900万円)で採用された、とのニュースが流れたが、これらはごく一握りの極めて特殊なケース。一流理工系大学の卒業生でさえ、年俸50万ルピー(約75万円)ももらえればかなりの「成功者」の部類に入る。現実はそう甘くはない》

 人口3番目の米国に次ぐ4番手インドネシアも2010年の大学進学率が23%に達して大衆化時代に入っています。当然のことながら大学卒の質と職とのミスマッチが各国あちこちで顕在化しています。そして、若者とって次の課題、結婚がアジアでは大変になっています。国際結婚問題も含めて第276回「アジア工業国の非婚化は日本以上に進んでいる」や「インターネットで読み解く!」「人口・歴史」分野を御覧ください。