第405回「再流行の鳥インフルエンザ、患者規模が昨年を超す」

 昨年春から初夏に流行した鳥インフルエンザH7N9型が中国で再流行し、30日午前に患者140人と昨年を超えました。今回の流行は終息の気配を全く見せておらず、帰省大移動が始まる旧正月を迎えて拡大必至です。昨年の流行(患者135人)は2月に始まり3月下旬から4月中旬までがピーク、5月以降は散発的になりました。今回は10月からさみだれ式に患者が発生、新年になって一気に膨れ上がりました。WHOの21日付リスク評価にある週別発生グラフに加筆して現在の発生状況を示します。  週に20人以上の患者があったのは前回は3週でしたが、今回はすでに4週になっています。ピークも高まっており、今後の予断は許さないでしょう。前回、最も患者が多かった浙江省で2日前に前回を超え、患者49人時点の集計で死亡12人、治癒1人、治療中はなんと36人でした。全体で44人が亡くなった前回に比べて現在の死者は22人に止まるものの、危篤や厳しい状態と伝えられたケースが多く、浙江省でも「死亡の割合上昇中」と伝えられています。また、前回よりも発生地域の面積が拡大、高齢者中心から若い人に感染が広がりつつあります。  市省別の患者発生状況地図を掲げました。上海の南、浙江省で62人、次いで香港の北にある広東省で43人、両省の間にある福建省11人、上海8人、その北の江蘇省7人、香港4人、北京と内陸の貴州省、湖南省に広西チワン族自治区、台湾がそれぞれ1人です。14日までの数字に比べて沿岸部は数倍に膨れ上がりました。この数には入れませんが、福建省の西、江西省でH10N8型の患者が2人出ています。

 本格的なヒト・ヒト感染には至っていないものの、浙江省で夫婦と娘の家族3人、広東省で父と娘の2人が相次いで発病しています。生きた鳥に接触する生活環境が広がっているために断定は難しそうですが、「非持続的なヒト・ヒト感染」といった表現がされています。ヒトから感染するとしても濃厚な接触が必要と考えられているようです。今後、ウイルスが突然変異する可能性はありますが、現状ではヒト・ヒト感染によるパンデミック、感染爆発の恐れは少ないとWHOもみています。

 旧正月(春節)のお祝いで生きた鳥をさばいて料理する食習慣が感染を広げているのは間違いありません。生きた鳥を持って帰省することも珍しくなかったそうです。中国政府は防疫体制を強化するとともに、38度以上の熱があって1週間以内に生きた鳥と接触した人は旅行を中止するよう、緊急通知を出しています。香港は本土から鳥の搬入を禁じ、生きた鳥の市場を閉鎖してしまいました。各地で同様の市場閉鎖が続いています。

 もう一つ、感染を広げて重篤な患者を増やす問題が昨年、第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」で指摘した中国の医療保険制度の貧困です。特に農村部では医療保険は無いに等しく、発病しても医療費を心配して受診できない間に抗ウイルス剤で効果的に叩ける初期期間を過ぎてしまう恐れがあります。

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