第414回「鳥インフルエンザ、終息せず散発発生を継続」

 中国の鳥インフルエンザH7N9型流行は3月に入っても終息せず、散発発生を続ける傾向になっていることがWHOの定期リポートで明らかになりました。生きた鳥を料理に使う食習慣を絶たないと根絶は難しそうです。大きな都市では生きた鳥を扱う市場を鳥インフルエンザ流行に応じて一時的に閉めるのではなく、永久停止する動きになっています。WHOの「Report 14」にある週ごと発生例数グラフに、人民日報で報道されている最新データを加筆して以下に掲げます。  昨年の第1波流行が患者135人で終わったのに対して、今の第2波は既に患者256人にもなっています。1週間に40例前後も発生したピークが旧正月の帰省ラッシュをはさんで存在しました。現在は週に10例程度の発生になっています。昨年第1波流行でのピークは第14、15週にあり、今回はまだ第10週なので気が抜けない状況です。死亡者は第1波が44人だったのに対し、第2波は2月末で72人もいて今後さらに増える見込みです。

 第1波と第2波の患者数を、主な市と省で北から並べて比較します。
  北京 2 → 2
  江蘇 27 → 15
  安徽 4 → 6
  上海 34 → 8
  浙江 46 → 89
  湖南 3 → 15
  福建 5 → 16
  広東 0 → 91
  全体 135 → 256

 上海市から北側は全体の流行規模が拡大したのに良く発生を抑えた印象ですが、浙江省から南では第2波流行の激しさが出ています。特に香港の北にある広東省は最大の患者数91人になっています。第1波では江蘇、上海、浙江で生きた鳥を扱う市場を閉鎖したら流行が終息しました。今回の第2波もそれに習った措置が取られました。北京と上海はさらに進めて永久停止を打ち出し、江蘇省の南京市も追随しました。浙江省でも杭州など主要都市は永久停止の方向ですが、小規模な市は漏れています。広東省では2週間の都市部市場閉鎖で患者発生が下火になっています。

 H7N9型は鳥にとっては高病原性ではなく感染しても死に至りません。このため生きた鳥に一般市民が接触しうる市場を閉じるしか無いのです。患者発生に伴う鶏やアヒルなどの殺処分で養鶏業界に莫大な被害が発生しており、鶏肉などを4度以下のチルド状態で流通させるシステムに移行が図られています。旧正月にはお祝いで生きた鳥をさばく料理の習慣があり、流行に拍車をかけたと見られています。

 しかし、中国全土で食肉チルド状態流通を実現するのは先のことでしょう。依然として中国南部では鳥と豚と人間の生活圏が非常に近い環境が残り続けます。鳥と豚と人間のウイルスが入り混じってパンデミック、感染爆発に至る新型が現れる危険があります。第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」で指摘した中国医療事情の貧困問題があり、表に出ている患者数が実は氷山の一角にすぎない可能性を、WHOも別の報告で認めています。