第527回「日本列島を揺する地震軸エックス交差を地図に」

 富士川河口断層帯の位置を産総研が特定したニュースを見て、日本列島を震撼させている地震の中心軸が二つである点を思い起こしました。エックスに交差している2大軸を一緒に見せる地図が無いので自ら作成しました。ひとつは西端で今回の熊本地震の震源になっている中央構造線で東の端は関東に至ります。もうひとつは東海地震や南海地震が心配されている南海トラフで、その延長が富士川河口断層帯で上陸して富士山の西を北上、長野県諏訪湖付近で中央構造線と交差し日本海に抜けます。グーグルマップ「中央構造線」の上に南海トラフなどのデータを書き込んだのが次の地図です。濃い青が中央構造線で空色は推定部分、南海トラフと延長は赤い線です。  中央構造線から南側の陸地は、列島がまだ大陸の一部だったころ南方からプレートに乗ってやってきて元の列島北部と接合した部分です。その後、大陸の辺縁が割れ始めて列島が大陸から分離する際に、南海トラフと列島東側を南北に走る日本海溝とが強い力を及ぼして中央で折れた状態になりました。陥没したフォッサマグナ、大地溝帯の出現です。有名な糸魚川静岡構造線はその西側境界で、東側境界は新潟から東京東部・千葉に南下するラインにあります。

 産総研(2016/05/18)の《富士川河口断層帯の位置を陸・海で連続的(シームレス)に特定》はこう言います。

 《2013年に駿河湾北部沿岸域で地質・活断層調査を行い、沿岸部の陸域から海域にかけて連続的(シームレス)に富士川河口断層帯の地質構造を明らかにした。特に、富士川河口断層帯と駿河トラフは、雁行して配列する位置関係にあり、連続性があることが判明した》《富士川河口断層帯は、南海トラフで大地震が発生した場合に、連動して大きな被害をもたらす可能性がある》

 南海トラフの延長はフォッサマグナの境界ではなく中を走る形になっています。この付近の断層分布詳細をご覧になりたければ産総研の《起震断層・活動セグメント検索[GoogleMaps版] 》を見て下さい。延長が日本海に落ちた先は北上して日本海東部地震の震源域に繋がるようです。太平洋では南海トラフから中央構造線までの間には西から南海地震震源域や東南海地震震源域、さらには東海地震の推定震源域が連なっています。危惧されているのはこうした大地震が連鎖する事態です。

 こうして地図にしてみると日本列島の地震が連鎖しないわけがないと改めて思えます。第524回「熊本の大地震が関西にも地震を呼んだ観測結果」で熊本地震が関西地域に及ぼした観測結果を紹介しました。個々の地震について吟味しなくても地域として大づかみすれば見えるのです。地図で2大軸が交差した諏訪湖付近の地下は地表から見えないものの、折れ曲がりからして錯綜した構造になっているでしょう。南海トラフで巨大地震が起きる時には、平行している西日本の中央構造線だけでなく、交差している関東甲信越の部分にも響く可能性を考えたほうが良いと思います。