第616回「次の韓国制裁土壇場で保守白旗直言、政権は苦悩」

 日本政府が設定している次の韓国制裁期限を前に15日、韓国保守系メディアは文在寅(ムン・ジェイン)大統領に白旗を勧める直言をしました。しかし、政権側メディアは最大野党などの政権批判をお門違いとする社説です。いわゆる徴用工問題をめぐり日韓請求権協定に基づいた「第三国の委員」による仲裁手続きの期限が18日になり、ここでも何らかの制裁発動がありそうです。でも韓国側がようやく恐ろしさに気付いたのが、これまでの輸出優遇「ホワイト国リスト」からの韓国除外です。粛々と手続きが進んでおり、8月半ばから発動が見込まれます。1100項目にも及ぶ日本の製品が今後は政府の審査を経なければ輸出されなくなり、日本製の機械に日本製の部品や素材で輸出産業を維持している韓国は首っ玉をつかまれた形です。

 中央日報日本語版に李夏慶(イ・ハギョン)主筆のコラム《日本の経済戦争の挑発、日本よりも考えてこそ勝つ》が載りました。社説でなかったのは言いたいことを言うためでしょう。

 《韓国企業に対する日本の半導体材料輸出規制は緻密に準備された銃声のない経済戦争だ。日本は強制徴用被害者大法院判決を放置して韓日協定を無力化させたとして、文在寅(ムン・ジェイン)政府の白旗投降を求めている。半導体が崩壊し、韓国をホワイトリストから除外する全面的報復が始まれば韓国経済は耐えられないだろう》

 冒頭からとっても刺激的な論調です。

 《事態の核心は経済ではない。日本は強制徴用被害者と慰安婦合意破棄をどのように整理するつもりなのか、文在寅政府に問うている。その問題が解決すれば経済報復も解けるだろう》

 あえて親日的と批判されても大統領は行動すべきと勧めます。

 《国政最高責任者である大統領はこれとは違うべきだ。自分を犠牲にしても国益のために安倍に場所を問わずすぐに会おうと言わなければならない。日本の貿易報復は間違っているが、今回の事態の口実は明らかに韓国側が提供した。会って目前の火から消さなければならない。その前に強制徴用被害者賠償問題に関連した好循環の動きを出すべきだ。与野党推薦の超党派的専門家委員会を作って大統領直属で置くのも良い方案だ》

 ムン政権を代弁する進歩系のハンギョレ新聞日本語版の社説《「制裁拡大」押し切る日本と韓国野党代表の間違った認識》はこうです。

 《このような状況で第一野党である自由韓国党が韓国政府の批判だけに没頭するような姿を見せているのは非常に遺憾だ》。前政権の首相だった《ファン代表は国民同意なしで進めた韓日慰安婦合意を「未来のためのもの」と信じているようだ。野党第一党と一部の保守マスコミがこのような考えを持っているので、安倍政権が無謀な貿易報復を敢行し、その根拠として「韓国内世論」を持ち出しているのではなかろうか》

 自分がした行動を顧みて考えるのではなく、誰かのせいにして放置する韓国的なパターンです。とは言え、保守の直言も進歩の防御姿勢も韓国語版を見るとそれなりに読者に支持されています。では大統領はどうでしょう・

 韓国聯合ニュースの《「日本経済により大きな被害」と警告 外交解決求める=文大統領》は最初は対日強硬姿勢に見えますが、最後のところで何か釈明したいように聞こえます。

 《強制徴用問題に関しては、「大法院判決の履行問題の円満な外交解決案を日本政府に提示した」として、「韓国政府はその案が唯一の解決策だと主張したことはない。両国国民と被害者の共感を得られる合理的な方策を議論してみようというものだった」と説明》

 10日に書いた第615回「自らの反日政策は棚上げ、被害者ぶる韓国大統領」の調子とは変化が出てきました。しかし、反日で固まり「義兵だ」とか口走っている大統領府周辺をなだめて本当に柔軟姿勢が打ち出せるのか、秒読みになっている制裁期限に間に合うでしょうか。