第694回「小豆は縄文の日本で誕生判明にメディア無関心」
小豆は日本で誕生とゲノム解析で判明――あんこの原料にもなる東アジアの重要な作物小豆が縄文時代の日本で生まれたという「大ニュース」が正当に扱われていません。稲作と同様に中国から伝わった通説通りではなく、世界の二大科学誌「サイエンス」に論文が掲載されたのに、ネット上のニュースとして細々と流れているだけで、国内の大手メディアは無視です。論文筆者のトップが台湾大学で日本の農研機構との共同研究であるにせよ、近年話題になっている縄文の先進性を明確にし科学領域を超えた歴史認識に関わるニュースです。国内メディアのニュースバリュー判断力が落ちていると常々思っているものの、ここまで酷いとは、と慨嘆します。(端的な例として立命館大講義録)
農研機構の5月30日付プレスリリース《(研究成果) アズキの栽培化が日本で始まったことをゲノム解析で明らかに》にある「栽培アズキの伝播経路・成立過程」の図を引用します。西アジアのヤブツルアズキが中国南部に伝わってから日本に到来、栽培化された経路地図です。
《栽培アズキとヤブツルアズキを区別する特徴として重要な「種皮の色」の遺伝子ANR1を用いて解析しました。ヤブツルアズキでは黒味をおびている種皮の色が、栽培アズキではANR1遺伝子に起きた突然変異によって、赤くなります。また、この変異は種皮の透水性にも影響するため、自然界での生き残りには不利です》
《自然界で不利な変異型ANR1の頻度が増加したのは、人が赤いアズキを選抜していたことを裏付けています。アズキは一年生の植物であることから、人類によるアズキの栽培は、約1万年前には始まっていたと考えられます。日本にイネが伝来して稲作が始まったのは約3,000年前とされていますが、日本列島におけるアズキの栽培はそれよりも遥かに以前から始まっていた可能性が示されました》
「サイエンス」掲載の論文《日本におけるアズキの単一栽培起源と栽培遺伝子の進化---A single domestication origin of adzuki bean in Japan and the evolution of domestication genes》はこんな結論です。
《遺伝学的観点から縄文人が狩猟採集漁民だけではなかったことを示す、ますます増えつつある考古学的証拠を補完するものであり、洗練された農耕活動の明確な痕跡が現れる数千年前から、地域住民の間で弱い選択が行われていた可能性があるという、近年の考古植物学的見解を支持するものです》
稲作のはるか前から縄文の地域住民の赤いアズキ好みで選別、栽培が開始されていたという訳です。栽培化の現場は考古発掘で大粒の小豆が出ている北関東あたりが有力です。通常の作物伝播では遺伝子資源が多様なところがオリジナルと考えるのですが、栽培アズキの場合は日本で確立された後で中国大陸に伝播し、現地で野生種と交雑して多様性が生まれたと考えられます。
実は7300年前に九州南部の鬼界カルデラで超巨大噴火があって火山灰が東北南部に届くほどであり、九州の縄文社会は壊滅、当時は無人だった朝鮮半島南部に多くが避難したようで彼の地で縄文式土器が出土します。この際に外洋航海術をおぼえたのでしょう。栽培小豆を中国大陸に投げることも可能になっていました。
それにしても縄文の栽培小豆の確立は大トピックです。栽培小豆を中国大陸に伝えている点も画期的です。縄文と弥生の関係を考える上でも転機になるはずなのに、大手メディアは何を考えているのやらです。ニュースの価値を自分で測れないなんてジャーナリズムではありません。ルーチン仕事の「ご確認報道」にどっぷりと浸かってきたから、こんな惨状になるのです。
「サイエンス」掲載の論文の図も興味深いので引用します。
【関連記事】第17回「種子・修飾された遺伝子世界」(1997/08/28)
農研機構の5月30日付プレスリリース《(研究成果) アズキの栽培化が日本で始まったことをゲノム解析で明らかに》にある「栽培アズキの伝播経路・成立過程」の図を引用します。西アジアのヤブツルアズキが中国南部に伝わってから日本に到来、栽培化された経路地図です。
《栽培アズキとヤブツルアズキを区別する特徴として重要な「種皮の色」の遺伝子ANR1を用いて解析しました。ヤブツルアズキでは黒味をおびている種皮の色が、栽培アズキではANR1遺伝子に起きた突然変異によって、赤くなります。また、この変異は種皮の透水性にも影響するため、自然界での生き残りには不利です》
《自然界で不利な変異型ANR1の頻度が増加したのは、人が赤いアズキを選抜していたことを裏付けています。アズキは一年生の植物であることから、人類によるアズキの栽培は、約1万年前には始まっていたと考えられます。日本にイネが伝来して稲作が始まったのは約3,000年前とされていますが、日本列島におけるアズキの栽培はそれよりも遥かに以前から始まっていた可能性が示されました》
「サイエンス」掲載の論文《日本におけるアズキの単一栽培起源と栽培遺伝子の進化---A single domestication origin of adzuki bean in Japan and the evolution of domestication genes》はこんな結論です。
《遺伝学的観点から縄文人が狩猟採集漁民だけではなかったことを示す、ますます増えつつある考古学的証拠を補完するものであり、洗練された農耕活動の明確な痕跡が現れる数千年前から、地域住民の間で弱い選択が行われていた可能性があるという、近年の考古植物学的見解を支持するものです》
稲作のはるか前から縄文の地域住民の赤いアズキ好みで選別、栽培が開始されていたという訳です。栽培化の現場は考古発掘で大粒の小豆が出ている北関東あたりが有力です。通常の作物伝播では遺伝子資源が多様なところがオリジナルと考えるのですが、栽培アズキの場合は日本で確立された後で中国大陸に伝播し、現地で野生種と交雑して多様性が生まれたと考えられます。
実は7300年前に九州南部の鬼界カルデラで超巨大噴火があって火山灰が東北南部に届くほどであり、九州の縄文社会は壊滅、当時は無人だった朝鮮半島南部に多くが避難したようで彼の地で縄文式土器が出土します。この際に外洋航海術をおぼえたのでしょう。栽培小豆を中国大陸に投げることも可能になっていました。
それにしても縄文の栽培小豆の確立は大トピックです。栽培小豆を中国大陸に伝えている点も画期的です。縄文と弥生の関係を考える上でも転機になるはずなのに、大手メディアは何を考えているのやらです。ニュースの価値を自分で測れないなんてジャーナリズムではありません。ルーチン仕事の「ご確認報道」にどっぷりと浸かってきたから、こんな惨状になるのです。
「サイエンス」掲載の論文の図も興味深いので引用します。
【関連記事】第17回「種子・修飾された遺伝子世界」(1997/08/28)