時評「反習近平派と決裂修復に失敗、後継なく展望なし」

 
 中国共産党の内部対立は習近平・段階的退陣で軟着陸すると伝えられたのですが、第20期中央委員会第5次全体会議(5中全会)が終わっても道筋が見えないままです。来年後半に開催が決まった第21回党大会で習主席は続投する構えを捨てない一方で、党内で力の源である軍権は手から離れ、後継者が指名されず、皆が主導権争いに明け暮れて、壊れた経済を立て直す方策を真剣に考える為政者がいない――展望無し国家運営に陥りました。中国経済の危機的状況は7月の第701回「中国は大量失業から飢餓、借金大膨張破綻へ」で描いた通りです。  5中全会の最終4日日29日、人民大会堂に会場を移して記念写真のように撮影された景色です。1日目から3日目までは会場は北京郊外の軍が掌握するホテルで、各派閥の間で激論が交わされたはずです。会議後に発表された「全会広報」で大きな変化は、これまで必ず明記されていた「2つの確立」「2つの擁護」が消えた点です。『習近平主席を「党中央の核心・全党的核心」とする地位の確立』などが消えた一方で、逆に「党内民主」「民主集中制」「トップの職務遂行と権限行使の規範化」など数年来なかった表現が登場しました。習独裁の擁護が消え、独裁に歯止めを掛ける意図です。

 中央委員の討議・起草、政治局の承認を得たコミュニケですから、現段階の共産党の正式な意思表明です。手が付けられなかった事項で大注目が、人民解放軍の中央軍事委員会がメンバー補充されませんでした。習近平が主席、政治工作部門出身の副主席がいるだけで実戦で軍を率いてきた制服組の委員が存在しません。5人分の席が空いたままです。習近平の望むメンバー補充に軍が同意しないのでしょう。陸軍司令官やロケット軍司令官なども不在です。これでは台湾への侵攻など本格軍事行動は不可能です。

 一年前の「4中全会」で習近平主流派と改革開放の穏健派それに江沢民系の保守派の間で、習近平・段階的退陣の約束が交わされたようでした。まず党と軍のトップを退き、党大会で国家主席の座も渡す名誉ある引退です。

 ところが、今年1月、張又侠・中央軍事委員会副主席と委員の劉振立・連合参謀部参謀長を習配下の公安部門を使って襲撃しました。死亡説があります。張又侠から軍権を奪い返せると考えたのですが、制服トップへの理不尽な襲撃に軍の各部門は不快感を示し、主席への支持声明は全く発せられていません。これ以降、各地の軍駐留地への主席訪問・慰問もままならなくなり、軍権喪失が鮮明になりました。

 張又侠のような高位党員に手を出すには政治局の討議を経るのがルールだったのに破られたことで、幹部誰もが身の安全が保証されない恐慌状態です。穏健派が主席後継者と推す元国務院副総理の胡春華が5中全会の前に行方不明になり、習近平がまた手を出したか、あるいは軍が保護しているのではと、噂が飛びました。結局、胡春華は5中全会に出席し、テレビ放映画面で短時間ながらアップになったとされます。

 前の胡錦涛政権で首相だった温家宝ら長老が第二の党中央になる組織を立ち上げており、軍はこちらに傾いているようです。しかし、強権で習近平を引きずり下ろせば大義名分を明らかにしなければなりません。失政が原因とすれば、それは共産党の失政でもあり「無謬の党」を否定することになります。景気が良かった時代は遠く去り、国民から明日への希望が失われつつある現在、真実を語ることは恐ろしい結果になります。習近平は「党を守りたい」という長老たちの弱みを見越して、出来る限り居座るつもりでしょう。脳卒中を繰り返して健康不安が強まっているのに後継者は立てられていません。少なくとも1年後の党大会まで、中国の国家としての混迷は底なしに深まります。

 筆者注:欧米メディアやユーチューブで発信される多くの情報をウオッチして、この評論を書いています。引用先表示は煩雑過ぎるのでしません。


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